「たまには甘えてくれてもいいのにな。その日、言い争いになっちゃって。まだ喧嘩中なんですよ」

沙理奈は少しだけ悲しそうに笑っている。

「早く仲直りしなきゃ。取り返しがつかなくなっても知らないわよ」

一度壊れたものを元に戻すことの難しさ、ほとんど不可能に近いことを痛いほど知っている。

何かつぶやきながら沙理奈は窓の外を見ている。

何かに気づいたように、突然こっちに振り向いた。

「そうだ。一緒に旅行に行きません?」