「夫と知り合ったのは以前
勤務してた病院なの。
夫は、この年まで独身を
貫くかたぶつって噂されてた
わ。」
「おいおい。そんな事。」
「あなた、ごめんなさいね。
でも、そんな真面目な夫だから
次第に意識するようになって
いった。でも、夫は全然相手に
してはくれなかったわ。
わたしがシングルマザーで子
持ちだからって訳じゃないのよ。
夫には忘れられない女の人がいたの。
いつも写真を眺めていたわ。
きっとその方が真奈美さんだった
のよね。
でも、どうしても夫のことを諦め
られなくてわたしからプロポーズ
したの。
忘れなくてもいいです。わたしは
あなたのすべてを受け入れますって。
夫から、OKもらった時は本当に
うれしかった。」
「俺は・・・。なら俺は
何のために・・・。」
「衛君も辛かったんだよね。」
咲良の母親が背中から抱きしめてくれる。
そのぬくもりは俺が忘れかけてた母親
のぬくもりで。
自然と涙があふれ出した。



