…ヒタッ。 ……ヒタッ。 どこからともなく聞こえた音に、男はゴクッと唾を飲み込んだ。 緊張が体を駆け巡る。 …まただ。 滋野(しの)高校。 ここで、男は夜の警備の仕事をしている。 4月から働きだし、もう7月だというのに、いつまで経っても慣れなかった。 その原因がこの足音。 いや、足音らしきもの。 自分以外、誰もいないはずの真っ暗な廊下に、毎夜のように響く。