「ねぇ、幸正?今日は帰りたいな。」
「え?」
普段なら言わないような事を、由香里がサラリと言った。
「なんで?」
「お腹空いちゃった。へへ、お昼食べそびれてさ。」
「なら、俺のパン食べろよ。」
そう言って、昼に買いすぎて余ったパンを差し出した。
「あ、うん。ありがと…。」
由香里が差し出したパンを受け取り、鞄にしまった。
「なんだ、食べないの?」
「だって、幸正から貰ったパンだもん。そんなすぐに食べたら、罰当たっちゃうよ。」
ニコニコしながら、そう言った由香里。
その表情は、健康そのものだった。
「なんだそれ。俺、ちょっと生物準備室に餌取ってくる。」
「あ、うん。」
俺は軽い足取りで、生物室を出て行った。
俺と、由香里との
最後。
────……

