短編-ワガママな恋。〜始まりのあの日〜




「あー、それはやだ。」



目線を幸正から外の景色にずらし、あたしは控えめに答えた。




「なんで?」

「なんでも。」

「答えになってない。」

「なってる。」

「話せよ。」

「やだ。」

「なんで今日の朝まで…」

「やだ。」

「道路にいたのか…」

「やだ。」





幸正の問い掛けに、駄々っ子みたいにやだやだ言うあたし。




そして三回目のやだ、で話は一旦止まると、最終手段だとばかりに幸正は立ち上がった。





「じゃあ、帰る。」





鞄を持ち、帰る準備をする幸正。







「やだあ━━━━!」




あたしも立ち上がり、帰ろうとする幸正のシャツの裾を引っ張った。




ファミレスにいた他の客が、一斉にあたしたちを見る。






「じゃあ、話せ。」


裾を引っ張るあたしを振り返って見ながら、幸正は答えた。



「や…」


「帰る。」





「あぁ、話します!話します!」




幸正の裾をまだ掴んだまま目を見開いて、あたしはコクコク頷いた。






幸正はそれを見て意地悪くニヤリと笑うと、席に座った。





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