短編-ワガママな恋。〜始まりのあの日〜




こ、これが…幸正の番号。



サナエとの電話切った後、再び着信履歴を開き、幸正の番号を見つめる。




電話するべき、だよね。






あたし通話ボタンを押し、ゆっくり耳に当てた。








へーんなの。




つい最近なら、男に電話するのなんて超楽だったのに。







今なんか、こんなに心臓バクバクだよ。




目をつぶりながらコール音を聞いていると、ふいにコール音が止まり聞き覚えのある声が聞こえた。





『はい。』




で…出たよ、幸正だ。



なんて当たり前の事を思ってしまう。





「えと、幸正さんの携帯でしょうか?」




『そうだけど、単細胞。』




た、単細胞。


やっぱ幸正だ。





「だから、多細胞だってば!」




『あはは、はいはい。てか大丈夫なの?単細胞。』





「うん、大丈夫。」



『あそ、じゃあね。』





え、もう終わり!?




やだよ、切りたくない。




ちょっと待ってよ…。





「ちょ!待って!」




携帯を握りしめ、あたしは叫んだ。




『わ、何だよ。』





「今から会えますか?」







あたし、どうかしてる。