短編-ワガママな恋。〜始まりのあの日〜


1コールが鳴り終わらないうちに、サナエは電話に出た。




『もしもし!マコ!?生きてる?』


すごい勢いのサナエに、生きているあたしは死にそうになった。





「だ、大丈夫だよ。」



『もう、あんたは心配かけて…。今どこよ?』



「家です。」



『そっか、なら安心だね。…そうえば昨日の夜頃さ、野々村先輩から電話きてたでしょ?』




え、




やっぱあれって…






「やっぱあれ、幸正なの!?あの、090********ってやつ!?」




今度は、あたしがすごい勢いで叫んだ。



『いや、番号は知らないけど…。たぶんそれが先輩なんじゃない?』





「でもなんで…」




携帯番号なんて、教えて合ってないし…。

アドレスだって知らないのに。




『あたしが教えたの。…なんか、悪かった?』





「あ、サナエが?いや、とんでもない!むしろ…」


『むしろ?』




「むしろ…、な何でもない!」




"むしろ嬉しいです。"なんて、口が裂けても言えない!




『そう?、先輩も心配してたし、電話しときなよ?』



「わ、分かった。」




『じゃあね。』



そう聞こえた受話器の向こうで、何だかサナエが笑ってる気がした。




気持ち、バレてるかもな。