聞きたかったけど、やめた。

そんなことを聞いた時点で、一体何になる?

僕らのこの距離が縮むのかと言うのか?

恋人どころか、幼なじみの関係すらなくなってしまうかも知れないのに。


それは、5月の終わりだった。

「あたし、彼氏できたの!」

恋する乙女のように頬を赤らめて言った君に、持っていたコーラを落としそうになった。

一瞬、何を言ったのかわからなかった。

「彼氏…?」

初めて聞いた単語のように呟いた僕に、夏美は嬉しそうにうなずいた。

「サークルの先輩でね、かっこよくて優しい人!」

楽しそうに話す君に、僕は何も言えない。