何で逃げる必要があるんだか。

「何かあったの?」

夏美は首を横に振る。

「つーか、彼氏はどうしたんだよ。

一緒じゃねーのかよ」

そう言った僕に、
「…ごめん」

消え入りそうなくらいの小さな声で、夏美が呟いた。

「はっ?」

何が“ごめん”何だろう?

「彼氏は、いないの…」

彼氏は…いない?

いたんじゃねーのかよ。

そんな僕の気持ちを見抜いたように、
「正確に言うならね、別れたの。

七月の初めに」

夏美が言った。