「ー…くん、いっくん……」

『……う…ん?』


かすかに聞こえる、俺を呼ぶ声。


「いっくん、」

『……何?』

「起きて」

『……朝?』


俺は右手で瞼を左から右へと擦る。
右手を右の瞼に乗せたまま、そっと左目を開けると、部屋のライトもさることながら、眩しい笑顔を俺に向けるアヤカ先輩。


「おはよ。目、覚めた?」


俺はあえてこのかわいらしい声に返事をしてやらない。


「いっくん?」

相変わらず右手は右の瞼の上に乗せたまま、横目でアヤカ先輩を見ると、アヤカ先輩は少し不安そうな表情で俺の名前を呼んだ。


『…ん』

目は閉じたまま、おもむろに唇を突き出す。