真咲がとっておきと言う、高級ティーでのティータイムは実に穏やかな時間で。



2人の柔らかい表情を見られると、それだけで心が温まるから不思議なモノだ。




そうか…、すっかり俺は2人に夢中になっているらしい――…





「…真咲と結婚出来て良かった」


「な、何よ、急に」


手作りのおやつタイムを終えると、満腹になった亜実ちゃんがお昼寝中の現在。



俺たちは少し陽の落ちかけたバルコニーに出て、改めてビールで乾杯をしている。



日除けのパラソルの下で隣合っていたが、彼女の腰元をグッと引き寄せてしまう。




「こんな幸せなの、初めてだ」


「…っ」


俺の腹の上に乗せられて恥ずかしそうにしつつも、その言葉に目を潤ませる真咲。



血も涙も無い豪傑女などとんでもない…、オマケに鉄の女の異名は似合わない。



たとえ仕事で厳しくしていようが、実は誰よりも自分に厳しくある真咲だから。



失敗を咎めるよりもまず、相手に手を差し伸べられる優しさを持っているのだと思う。




「うん…、私も――」


大体…真の“鉄の女”だったら、作り手の本質が現れるお菓子で優しい味は出せない。



そっとキスをくれた真咲の表情が、またひとつ俺を惚れさせる材料になる・・・




  【弐  理 由★終】