それから亜実ちゃんに呼ばれた真咲は、俺をソファに座らせて戻って行った。



アレ以上のキスを重ねれば、絶対に怒るから素直にソレに従う事にした俺。



暫くするとリビング内に、甘くて優しいお菓子の香りが広がっていく…。



「まだかなぁ!?」


「もう亜実ぃ…、まだ早いわよ」


「お腹空いたもんー」


今までは生活感もなく、必要不可欠な器具と食材しか無かった空間だが。



たいして気にも留めていなかったリビングが、こんなにも安らげるとはね…――




「おいしい…!大和くんはぁ?」


「うん、美味いよ――

亜実ちゃんは料理上手だね、ありがとう」


「えへへー」


亜実ちゃんの奮闘のお陰で、小さなカップに入ったブラウニーは見事に完成。



ココアの香りと柔らかな口当たりが、手作りならではの優しい味をしていて。



ポロポロと零しながら満面の笑みで頬張る姿は、まさに天使そのものだから。



今から悪い虫がつかないか…、そんな心配をしている俺はオカシイかもな――