昔から欲しいと思う物は、一人っ子だった事もあって、割と願いを叶えて貰えていた。



成長するにつれて他へと視線が向くようになり、いつしか失っていた物を欲するコト。



ソレを蘇らせてくれたのは、決してお金では手に入れる事の出来ない無償の愛だ――




「…本当に?」


「うん!今日ね、病院にも行って来たの」


アメリカと日本という離れた地で、電話で報告を受ける事になってしまい残念だけど。



明るい声色で話す真咲の言葉に、まったく曇りがちなトコロは見受けられない。



「ホント、だよな?」


「ホントよ。6週目に入ったところらしいわ」


だけど何度も聞き返してしまうのは、嬉しさから来る動揺なのかもしれないが。


「やった…!」


「うん…、っ」


心の底から“やった!”と言えた事は、今までに何度…いや初めての経験だろう。



大切な人が身籠るという、これほどまでに喜ばしい出来事は無いと思わされた。