夢や願いを実現する為には、一方で切り捨てなければならないモノが出て来る。



どちらを選ぶかなんて考えず、今までの俺ならおもむろに突っ走って来たけど・・・




「…真咲――」


「大丈夫よ、検査したら連絡入れるから」


「そうなんだけど…」


「あ、待って。ネクタイが…」


玄関先で革靴に足を沈め、これからアメリカ出張の俺を見送ってくれる奥さん。



「これでOK」


「サンキュ」


彼女がチョイスしてくれた、ポールスミスのネクタイのズレを正すとフッと笑った。



出張が決まった日の帰宅後、俺が行く前に検査してみない?と持ち掛けたけど。



“正確か分からないもの”と、フルフル頭を振ってチェックを拒まれたのだ。



「それじゃあ行って来ます。

忙しいと思うけど、頼むからムリするなよ?」


「ふふ、それは大和でしょう?」


「…よく言うよ」


「っ、ん…――」


クスクス笑う彼女をそっと引き寄せると、そのまま唇を性急に奪ってしまう。