午後イチで行われる全体会議に出席する為、足早に大会議室へと向かう最中。



日野との雑談に時間を取られてしまった俺は、携帯電話で素早くメールを打った。




明後日からアメリカ出張が入った。今日は早く帰れるからよろしく――



もちろんその送信相手とは、結局“出社する”と言い張った奥さんだ・・・




“体調が悪いっていうより、その…生理が来ないの!”


ついに観念したと言わんばかりに、ハッキリと言い切った朝の真咲に対して。



“もしかして…!?”


“で、でも!まだ予定日から4日遅れてるだけで、もう少し経たないと…”


思わず大喜びしそうになった俺を、フルフルと頭を振って冷静に制した彼女。



“一人で苦しかっただろ?ゴメンな”


その苦しげな表情の理由が分かった途端、またギュッと胸に抱き寄せていた。



“私…もし違ってたらって思うと、言えなくて…”


小さな手で再びキュッとシャツを掴むと、ポツリと吐き出された彼女の本心。




早く孫が見たいという、俺の両親の言葉も少なからずプレッシャーだっただろうし。



何よりお母さんを亡くした彼女には、こういった相談を出来る一番の相手がいない。



仕事を楽しんでいる所もみられるようになったし、その事も悩みとなっていた筈だ。




「…欲しいな――」


それでも俺は。やっぱり早く愛する真咲との子供が、出来ていて欲しいと思う…。




 【#十四  願 望★終】