独身時代の休暇は出掛けていたし、マンションで過ごす事は殆ど無かったから。



何というか…、この空間に対してのこだわりや執着はもちろんゼロだったけど。



キャーキャー騒ぎ合う仲良し姉妹を、ソファから眺めてゆったり過ぎる今。



結婚してガラリと変わった生活を一言で表せば、“幸せ”以外に浮かばない――




「そろそろ、ドコに行くか決まった?」


そんな2人をフッと笑いながら、黒革のキーケースを手にして立ちあがった。



「「水族館!」」


「ハハッ、息ぴったり」


まるで双子かと思うほどのハモリに笑うと、3人手を繋いでマンションをあとにする。



「亜実ちゃん」


「わーい!」


小さな身体を抱き上げると笑う亜実ちゃんに、真咲と顔を見合わせるのはいつもの事。



少しずつ、だけど日々成長する妹を見る彼女の顔は、どことなく母親らしく見える。



そうして助手席は真咲、さらに後部座席へ亜実ちゃんを乗せて車をスタートさせた…。