朝倉エンジニアリングの社屋は、外資のGELより落ち着いた渋い造りをしている。



国内でも指折りの工作機械メーカーらしく、活気がある点はウチと同じだと思った…。




「あ…悪い。今すぐ、営業2課へ繋いで貰えるかな?」


「かしこまりました」


すると平蔵さんがその女性へ頼めば、女性はすぐさま会長室の電話の受話器を取った。



そして簡素なやり取りのあとで、受話器口を抑えながら女性が平蔵さんに近づく。



「失礼します…会長、どうぞ――」


「ああ悪い、もう下がって良いよ」


「それでは、失礼いたします」


彼女に目配せをして立ち去るのを見届けると、ニヤリと笑った会長さん。




「…おお私だ。悪いが、沢井くんを至急会長室へ寄越して欲しい。

ああ大至急だ、悪いね?」


電話口の相手は真咲では無かったようで、そう告げると終話ボタンを押した彼。



「…良いんですか、忙しいのに」


「フッ、これぞ経営者の特権だな?」


「確かに――」


バタバタと真咲が走って現れる姿を想像して、笑い合っていたのは後日の話…?



 【#八  強 引★終】