まずはカバンを真咲に預けてから、亜実ちゃんをいつもの椅子へと下ろした。



「あれ、日野さんは…?」


結婚式の招待状作成や軽い挨拶で、一応ヤツとは顔見知りになっている彼女。


「ああ、小林さんと打ち解けてたから置いて来た」


クールビズの季節ともあり、ノー・ネクタイのシャツのボタンをひとつ緩めた。


「もう…今日くらい、ハンター業は休めば良いのに」


料理の為にフルアップの髪とエプロン姿で、アレコレ奮闘しながら呆れたようだ。



「いや…それなら日野もだ。…お互い様だろ?」


「フフッ、そうかもね」


真咲が彼女の代名詞らしい、“恋愛マスター”の片鱗を見てしまった感もあるし。



日野が今日やって来た目的も、真咲の料理から一気に方向転換した気がするけど。




今なら分かる…。恋や愛というモノは、どこに転がっているのか分からないから。



皆だれもがチャンスを探して、最高の瞬間を逃すまいともがいてるのかもな…?




「もし…上手く行けば俺たちのお陰?」


「もう…っ、気が早いってば…!」


彼女の背後に回って、まとめ髪からのぞく、色っぽいうなじへキスを落として囁いた。



宇津木くんの名前が出た事くらいで、大人げない嫉妬を重ねてしまうほど。



こんな俺もまだ、ようやく手に入れた真咲に恋心を日々抱いているらしい…。



  【#七  面 談★終】