因みにGELは外資ともあって、多国籍の人間が働く環境にあるのだが。



「よくぞ聞いてくれました!」


「・・・」


“聞いてくれました”じゃなくて…、ソレでなくても勝手に話し出すクセに…。



生粋の日本人のクセに、妙に暑さを感じるコイツは同期の日野 敏哉(ヒノトシヤ)。



営業部に残った唯一の同期入社のヤツでいて、部内では主査と呼ばれる男だ。



厳しいノルマを掲げられている中でも、このテンションで日々乗り切っていて。



部内のムードメーカー的存在かつ、俺の社内で最も気の置けない人物でもあるが…。




「なぁ、今日お家行かせて…?」


本題に入ると、ゆうに30を過ぎた男とは思えない、気色悪い猫なで声を出す日野。



「誰が呼ぶか――ていうか、絶対来るな」


同僚としてツッコミを入れるべきだろうけど、ソッチはあえなくスルーだ。



「えー、新妻見せてよー!」


「ヤダよ。結婚式で散々見せただろ」


「減るもんじゃねぇだろ」


「オマエに見せたら減る、オマケに何かうつる。確実に」


「オイオイ、何その病原菌扱い」


終わりの見えない押し問答を続けながら、それでも入力する手は止めないでいた。