グルグルと渦を巻いていた不安感を、サッと取り払うように笑ってくれると。



ベッドの隅に片肘を置き頬杖をつきながら、もう片方の指が俺の頬を撫でた…。




「だって。大和なら、別フィールドでも頑張れるでしょう?

それまで私が働いていれば十分だし、何も困ることなんて無いわ」


“確かに妊婦だけど。忘れないでよ、私が"係長"だってコト!”



「――ハハッ!」


「や、大和!傷が…」


「ハハ、すげぇな…」


実にあっけらかんとした真咲の言葉に、傷口の痛みも構わず笑ってしまった。



大丈夫なようでいて。実は命に囚われすぎて、弱っていたのかもしれない。



弱る時は凄く弱っても立ち直ればすこぶるタフ、な彼女のお陰だ――…



「だから…、早く治る事だけ考えてね?

私も亜実もお義母さんもお義父さんも、それにお腹の赤ちゃんだって。

大和が心から笑った顔が大好きだから…早く日本へ帰れるように、ね?」


「――ああ…、本当にありがとう」


惚れ直すなんて言葉では足りないくらい、ただただ真咲が愛しくて堪らない。




「ねえ…頬にキスだけ、しても良い?」


「頬だけ?」


「今はね…」


久しぶりに感じた彼女の感触は、甘くて温かい花の香りが優しく鼻腔を掠めた…。



 【#二十二  相 互★終】