可愛らしい洋服に身を包み、すっかり出発の準備万端なのだから凄い。



2人で生きて来た経緯は、話を聞いただけでは計り知れない部分があるし。



真咲が苦しんだ分と同等、亜実ちゃんも苦労をした事は窺い知れるからこそ。



幸せとともにこの笑顔を絶やす事が無いよう、密かに自身を戒めるのが日課だ…。




可愛い天使の話に耳を傾けていると、天使が突然にキッチンの方へと視線を向けた。



「真咲ちゃん、おなか空いたー」


どうやら腹ペコ天使は、ダイニングテーブルから放たれる誘惑に負けたらしく。



早朝からバタバタと動く奥さんに、物欲しそうな眼差しと声で尋ねている。



「ふふっ、いいよ食べてて」


「わぁい、いただきます!」


キッチンで弁当作りをする真咲の許可を貰って、パンと勢い良く両手を合わせて。



すぐにトーストをカブりつきながら、“おいしい!”を連発する姿は微笑ましい。