優しい人は誰かと尋ねられれば、間違いなく自分の奥さんだと答えるであろう。



たとえ周りにノロケと捉えられようが、彼女ほど気遣いの出来る人はいない。



周りに対して厳しく向かうのも、そして失敗を咎め過ぎないところもすべて。



相手の成長を願える本心から由来する、隠れた優しさではないかと思うから――…




大人しくソファで座っていた亜実ちゃんを一瞥すると、今はすっかり夢の中で。



時をみて病室へやって来た両親は、亜実ちゃんを連れて先にホテルへ戻った行った。



小さな身体に疲れと不安を溜めさせた事が窺えるから、申し訳なさだけが募る。



そして何より。ベットの脇で悲痛な面持ちをした真咲を、ただ抱き締めてやりたい…。




「真咲…、話しても良いか?」


「・・・うん」


彼女を抱き締める事も叶わない今は、信じてくれるであろうと願って話すべきだから。



せめてもと、安心させるように華奢な手をキュッと握り締めてやるのが精一杯だ…。