「なによぅ。いーじゃない別にあたしがどこ行こうと。」
「お前はな…まぁいい。とりあえずもう行け。俺はまだ咲夢さんに用事があんだよ。」
「ねぇ、どうしてさんづけなの?ひょっとして年上?成瀬川さん?」
突然私に話をふられたから、私はしどろもどろになりながら返事をする。
「い、いえ…その、奏太くんの1つ下…です。」
「てか俺ちゃんと妹つったろ。人の話を聞けよ。まったく、空にしろ長澤にしろちゃんと話を聞け。」
秋くんがおせっかいモードに入っていく。
でも私はそんな事より、秋くんの腕に添えられた長澤さんの白い手から、目が放せなかった。
そういえば、こんなことは普通な事なのに、私はどうして気になるんだろう。
あたしだって、学校で男の子と話すし、秋くんだってたぶんそうなのに、
気になる。
なんだか、秋くんが遠く思えて、嫌になる。
奏太くんという支えをなくした私と秋くん。
奏太という共通点しかない私と秋くん。
別に近くも遠くもない距離。
そのはずだった。
「咲夢…さん?どうした?」
「え…?」
「気分でもわるいのか?」
そこで私は気がついた。
私は無意識に、奏太くんの右袖のシャツをチョンっとつまんでいた。
秋くんが返事のない私を見てちょっと困った顔になる。
長澤さんはそんな秋くんをみてほくそ笑んでいた。
私が怪訝に思っていると、長澤さんは秋くんの背中をバシバシ叩いて、
「良かったじゃん穂高。成瀬川さんなんでしょ?あんたの追っていた歌姫は。」
「は…!?」
「クラスの男子みーんな噂してたよ。早瀬の歌姫。もしくは聖母さま。」
「げぇっ…」
「さて、あたしはあたしでスッキリしたし、成瀬川さん!いつでも相談乗るから!てことでこれあたしのメルアド。いつでもメールちょうだいねー!」
メモっぽいものをあたしにわたしてすたこらと長澤さんは去って行った。
「あ、あいつは何がしたかったんだ…?」



