「あっれー?穂高じゃん!」
突然割り込んできたその声は、私の知らない声だった。
秋くんが桜の木から背中を離す気配がする。
私も秋くんがいる方へと移動すると、目の前にいたのは愛染高校の女子生徒だった。
なんていうか、マグダラのマリア的な要素がある…猫みたいな…
「なんだ、お前か。長澤(ナガサワ)。」
「なんだとは何よー!てかこの子だれ?早瀬高校の子じゃん。」
長澤という人は私を指差してそう言った。
その指を秋くんは掴んで、
「人を指差すんじゃねぇよ。…奏太の妹だ。成瀬川 咲夢さん。」
「成瀬川の!?へぇ…あいつ妹なんていたんだ。自分の事ぜんっぜん喋んなかったから知らんかったわ。」
長澤さんは私をジーっと観察した。
なんか、緊張する。
長澤さんは色を抜いた茶髪をきっちり肩で切り揃えていて、制服も規定通に着ているのに、なぜか惹きつけられる。
そんな人だった。
「あんま似てないね。成瀬川に。」
「あ…血が、繋がってないので…」
「え!そうなの?」
「あー、はいはいストップ!長澤、お前なんでここにいるんだよ。」
私と奏太くんのことについて聞き出そうとする長澤さんを、秋くんは遮った。



