秋桜が散る前に

グレた…?って、あの不良になるという…?



秋くんが?




「まぁ、タバコ吸ったぐらいだけど。俺基本ビビりだし。」


「そう、なんだ…」




奏太くんや私が孤児なように、秋くんも秋くんの欠陥を抱えていたって事だ。


秋くんの欠陥は秋くんにしか理解できなくて、他人がどうこうできるわけじゃないんだけれど、理解しようと努力する事はできる。


それはとても傷つきやすい状況に自分を追いやる事になる。


それでも、奏太くんは人を理解する事を諦めない人だった。




「奏太は、中1のときに俺と一緒のクラスになって、屋上で1人タバコふかしてる俺を偶然見て言った。


『その身体、誰から貰ったつもりだ?』


バカだよな。今時こんなセリフ吐く奴いたんだなって思って、俺の勝手だって、言ってやったら、

『立ち止まっても、人生の時間が減るだけだぜ?どうせなら、その時間、楽しんだ方が、俺はいいと思うけどな。』」




一言一句、確実に、秋くんは奏太くんのセリフを再現していた。


いかにも、奏太くんが言いそうな言葉。



でも私は、奏太くんのことより、


いつのまにか私の隣から桜の木をはさんだ位置に移動している秋くんの顔が、どんな風なのか気になった。


緑葉が覆い茂る桜の木1本の距離に、私は本当の秋くんを感じて、同時に、その微妙な距離にイラついていたんだ。