秋桜が散る前に



そう提案した私の期待に反して、秋くんは




「ここでいい。中は…なんか落ち着かないんだよな…」




そう答えた。私はちょっと複雑な気持ちになる。


私にとっての教会は、とっても落ち着く場所だったから。



やっぱ…抵抗あるよね…宗教がかかわってるし。



「そんな顔すんな。別に、教会が嫌なわけじゃない。ただ…」




秋くんは私の顔色を読んでそう言ったけど、『ただ…』の先までは言ってくれなかった。



なんだろう。気になるな…




「ただ…何?」




私は顔を目一杯上に向けて、秋くんと目を合わせた。



今まで意識した事なかったけど、私はどうやらまともに秋くんの顔を見て話した事がなかったかもしれない。


秋くんはいつも私の為に下を向いてくれるのに。


出会ったときから、


ずっと。




「ただ…俺は、神様を信じきれないから、教会に入る事に、罪悪感を感じるだけ…それだけ。」




でも今、秋くんは私から目を逸らして、ボソッと、小さい声で、どこか遠くを見ながら、そう言った。