秋桜が散る前に




「ごめん。最後の伝言は、あの日の様子からして、言わない方がいいと思った。」




秋くんは手紙を握り締めて泣いている私に向かって、そう謝った。




「ううん…ごめん。泣いてばっかで…ありがとう。大丈夫…」




ごめん。ありがとう。大丈夫。


私はそんな言葉を繰り返しながら、泣いた。


私、聖母なんかじゃないよ。


奏太くん。


私も、あなたがいて、幸せでした。




「ごめん…なさい。随分迷惑…かけちゃって…」

「いいよ。別に。迷惑じゃなかったし。むしろラッキー…」




秋くんが最後の単語を濁すから、私はあまり聞こえなかった。


だけどそれはあんまり私にとって重要じゃなくて、



春の桜が散る中、私は秋くんの前で、好きなだけ泣いた。