秋くんは黙ってしまった。
下を向いて、何かを考えている。
早和はそんなことを気にするはずもなく、スキップを始めた。
うぅ、泣きそうだぁ…
「奏太くん、学校でどんなだったの?」
話を逸らしたいから、テキトーに話題を選んだけど、やっぱ奏太の事になる。
そこで私は気付いた。
―私と秋くんは、奏太くんの事でしか接点がない…―
私と秋くんは、共通の人間を介した単なる知り合いなんだって。
「奏太は、無口で、無愛想で、ちょっと鈍感だったな。自分の事はほとんど話さなかった。」
「そう、なんだ…」
「でも、咲夢さんの話はよくしてたな。」
「え…?」
秋くんは私の前に真っ白な封筒を突き出した。
「奏太、死ぬ前に、俺に送って来たんだ…。俺じゃなくて、あんたに送ればよかったのに。馬鹿だよな。」
私は早和の手をはなし、封筒を手に取る。
宛名は、穂高 秋様
差出人は、成瀬川 奏太
見違うはずのない、奏太くんの字で、封筒の色と反する漆黒のボールペンで、
そう書かれていた。