「大丈夫、右近君、私がついてるよ」

壁だと思ったのは尋だった。

俺は尋に抱きしめられていた。

俺を離し、クラスメイトの方を向き尋が言った。

「右近君をいじめる人は、私が許さない。」

クラスメイト達はばつが悪そうに下を向いた。

女子生徒にも男子生徒にも人気のある、尋に嫌われるのは誰でも怖いようだった。

「もう大丈夫だよ!」

尋は笑って自分の席へとついた。

その後ろ姿はとても頼もしく、美しかった。

静まり返った教室、小さな声で咲美が「ごめん・・・」と言って離れて行ったのに気づいた。

ごめんって?一瞬疑問に思ったが、今の俺はただただ尋の後ろ姿に見とれていた。

視線に気づいたのか、尋が俺の方を振り向いて、微笑みながら手を振ってくれていた。

学校に来て、本当によかった。

その日、初めてそう思った。