「試験は一週間後だ。」

「今日はとりあえず、帰って勉強しなさい。」

「一週間後、救済試験を行う、遅れないように。」

小桜先生にそう指示され、その日はそのまま帰る事にした。

帰り際に咲美に礼を言った。

咲美がいなければ、俺はまた学校に入ることもできずに逃げ出していたかもしれない。

「ありがと・・・な」

咲美は二コリと笑い、首を左右に振った。

「試験がんばってね!」

俺は力強い足取りで家へと歩き出した。

学校へ行けた達成感、そして救済試験をクリアする事ができれば留年しないで済む事に俺の心は希望に満ちていた。

帰りに参考書を山の様に買い、勉強をする為に急いで家へと向かった。

アブラムに学校へ行けた事も報告しなければならない。

五輪の書はどうでもよかったが、咲美を助っ人として用意してくれた事に対してはアブラムにも礼を言わなければならない。

それにしてもアブラムは粟田さんや、咲美を知っているなんて顔が広い。

本当にアブラムは神様なのかもしれない。

俺の今はアブラムに出会った事で大きく変わるかもしれない。

いや、現に変わっている。

俺の希望は家に近付くにつれて、どんどんと膨らんでいった。