アブラムに紹介してもらった美容院は俺が住んでいる閑静な住宅街とは違い賑やかな繁華街だった。

すれ違う人すれ違う人目をそらし、下を向いて歩いた。

少しずつ気分が悪くなったので、近くのデパートのトイレに入った。

便意もないが、便座にこしかけ、天井を見上げる。

しかしトイレもガヤガヤと出入りが激しくとも落ちつける場所ではなかった。

しばらく休んでからトイレを出て、再び美容院へと足を急がせた。

美容院の前について驚いた。

俺がいつも行くところよりもはるかに大きく、はるかに綺麗でお洒落なその店にこれから自分が入ると思うと足がすくんだ。

逃げるな。

立ち向かえ。

俺はできる。

できる。

魔法の呪文を心の中で唱えて勢いよく店内に入った。

中はお洒落なお客さんと美容師さんで溢れていて、あまりにも眩しいその光景に貧血気味に俺は大きく左右にふらついた。

「いらっしゃいませ、大丈夫ですか？」

かなりイケメンなお兄さんが俺に声をかけてきた。

「だだだだ、大丈夫です。」

「ちょっと地球の自転に酔っただけです。」