真っ白だ。
 真っ白な世界に俺はいる。

 雪でもないのに地面は白く、雪でもないのに冷たい地面。

 なんだろうここは。

 柔らかな地面は俺の足跡をしっかり残してくれる。

 不思議だ。
 なんて不思議な世界だ。

 小さな山がいくつかあるがそのすべてが真っ白。

 不思議だ。
 なぜすべてが真っ白なんだろう。

 あ。
 すべてが真っ白ではなかった。

 赤があった。
 奇妙な柱が何本も立っており、その柱の上で赤が揺れている。

 綺麗。
 綺麗だ。

 真っ白な世界で輝く赤。

 輝く赤に染まることない真っ白な世界。

 綺麗だ。
 なんて綺麗……。

 え!?

 いつの間にか俺の頭上に巨大な柱が浮いていた。

 柱の先からは細い棒が伸び俺に向けられている!?

 な、なんだいったい。

 まずい、逃げないと――



 シュー



「……なあ、普通はケーキごとゴキブリに殺虫剤をかけないと思うんだが」

「どうせ食べられないからいいじゃんべつに」