僕は部屋に戻ると着替えて出掛ける用意をした。

今日もあの沢にいくつもりだ。

タンスから適当にシャツとズボンを引っ張り出し、小学校の入学祝に父に買ってもらったナイフだけ持って家を出た。

ナイフと言うのはとても役立つ。

使い方は父に教わった。父は祖父に、祖父はその父に、父から子へ教え継がれるそうだ。

ナイフを手にして10年弱になるけど、僕のナイフさばきはなかなかのもんだ。

自分で言うのもなんだけど…。

ナイフがあれば何でも作れてしまう。

ふと、あの女の子にもプレゼントをあげようと思い付いた。

その辺に落ちていた太めの枝を一本拾って、僕はそれを小さなバラの花に変身させた。

喜んでくれるだろうか。
色をつけたいけど、絵具は持ってきていない。

今さら家まで取りに戻るのもいやだった。