病茸【短編】

「ただいまー」

帰宅した母が玄関にあがるとリビングにいる私を見てひっ、と息を呑んだ。

「おかえりなさい…」

私はぼりぼりと掻き毟っていた。

頭を

顔面を

体中を

その度にあの不快な音がし、どろっとした液体が垂れ流れる。

プチュプチュプチュプチュプチュプチュプチュ…



体中に生えた病茸は私の身体に隅々まで寄生していた。






ボタッ…


「あ、生まれた」

頬の病茸から、黒いヤモリのような生き物が生まれ出てきた。