淳也は、帰ったその日に新品のノートを広げ、教科書の問題をひたすらやった。と言っても数学だけなのだが…。
「後1問だ」
 と、そのとき。
「待て待てぇ!まだ終わらせへんぞぉ」
 どこからか、関西風の声が聞こえてきた。しかし、淳也は、外で関西の方から来た人が騒いでるんだろうと、無視していた。「あら? ここは、こんな喋り方ちゃうんか?じゃあ…」
 そこで一度声は途絶えた。やっぱり外だったのかと、ため息をついた、そのとき。「まだ終われせねぇよ!間違いだらけだぜ兄ちゃん!1ページ前の2番、2ページ前の4,5,6番、3ページ前は1番以外全部!」
 これは外からの声じゃないと思った淳也は、辺りをきょろきょろ見回した。しかし、部屋には淳也意外誰もいない。なれない勉強して、疲れてるのかと、こめかみ辺りを軽く押して、背伸びした。
「おぃ、幻聴じゃねぇぞ!目の前のノートだよ。お前が買った、大学ノート!!」
 淳也は自分の耳を疑った。確かに、その声はノートから聞こえていたのだ。
「うえぇ!」
「うえぇ、じゃねぇよ!間違いだらけだっつってんだろ!さっさと直しやがれ!」
 どうしても信じられなかった淳也は、ページをめくって、何か仕掛けがないか探した。
 しかし、どこにもどれらしき物はなかった。
「早く、直せや!!」
 また、怒声が飛んできた。
「わ、わかったよ…」
 恐る恐る、自分の解答と、答えのページを見比べて見た。すると、本当に間違えまくっていた。
「マジかよ…」
 淳也は、しぶしぶ直した。すると、そのノートは、少し声色を変えて喋った。
「やればできるじゃねえか」
「当たり前だ。ところで、お前なんで喋れるんだ?ノートだろ?」
 その質問に、ノートは黙り込んだ。そして、逆に質問してきた。
「お前、どこの高校行きたいんだ?」
「俺?!俺は…、(のぞみ)高校に行きたいんだ」
 ここは、藤川の狙う、偏差値の高い高校だった。