君のとなりに誰が座る



あの日は寒かったよね。

たしか、初雪が降るってニュースキャスターが言ってた気がする。

短大卒業して初めての冬で、仕事もまだ完全には覚えきれてなくてさ、雪が降ったら会社行かなくて済むって思ったもん。

結局降らなかったけど。

あたし、まだ鮮明に覚えてるよ。

残業して、最寄りの駅に着いた時にはバスの時間過ぎてて。

もう最低って思ったら雨まで降って。

そしたらさ、いきなりフルネーム呼ばれた。

振り返るとあなたがいて、びっくりしたなぁ。

だって、あたしは文也のこと同じ大学ってこと以外、全然知らなかったし、暗いあたしに気がある人なんていないと思ってたから。

最初は冗談だと思ったけど、その真剣さと照れ具合に、本当なんだってわかったけどね。

嬉しかったな、あの時。

あたし、誰とも付き合ったことなかったから、本当、嬉しかった。