公園から駅までを2人は走り続けた。さっきまで汗をかいていなかった春美の額には、うっすらと滲むものがあった。

「ちょ…ちょっと…もう無理」

息があがった春美は文也の腕を引っ張り、立ち止まるようにせがむ。

「そこ、そこのカフェに入って休もう?
あたし、死んじゃう」

春美は文也の返事を聞かずに、店へと入り、さっさと席に着いてしまった。

仕方ないなぁ、と言いつつまんざらでもない文也はカフェへと入って行く。


「映画、何時だっけ?」

「あと2時間後」

「まだ余裕あるわね」

アイスコーヒーを2つと1つのドーナツを囲んでいる。

「いつの頃から、走るのがつらくなったのかしら」

「そうだな。でも、俺はまだ走れるぞ」

春美は文也の顔を覗き込んでは、嘘だ、という表情を作った。

「22でこんなに疲れたら、話にならないわ。また運動しようかな」

「やめとけよ、どうせ続かないんだから」

「知ったような口きいて」

頬を膨らませ怒ったフリをする。けれど内心、嬉しかった。文也が自分のことを知っている、と確証を持てたのだから。