「てめぇ!何すんだよ!?」


「自分が何したのか分かってんのか!?」


いつも一緒にいる2人が齋藤くんを起こしながら大声で叫ぶ。


「…は?だって遠藤に面貸せよって言ったじゃん。どうけストレス溜まってるみたいだから喧嘩だったんだろ?」


「そうだがてめぇに関係ねぇだろうが!」


「そうだ!」


相変わらずギャンギャン吠えている2人に冷静に近付きながら彼は涼しげな顔でこう言った。


「…"遠藤"に言ったんだよな?…俺も遠藤だ」


「!」


建物の隙間から夕日が差し込んで辺り一面がオレンジ色に輝いた。


僕は唖然と彼を見つめるしか出来なかった。


そっか…。


たしかに彼も遠藤くんだ。


「ぐっ…ふざけやがって…!」


齋藤くんは鼻を抑えながら立ち上がる。


その鼻から鼻血が出ていた。


「あぁすまん。面貸せよって言ったのにその場で殴ったのは反則だったな」


呑気な声で言う遠藤くんに齋藤くんは顔を真っ赤にして殴りかかった…が。


「うがっ!?」


ひらりと攻撃をかわした遠藤くんが齋藤くんの足を引っ掛けたので転んでしまった。


「なめた真似を…!」


「すみませんねぇ、俺の足が長くて引っ掛けちゃって」


足に「この悪い足め」とパシッと叩く遠藤くんを齋藤くんは睨みつけた。


「なんでだよ!こんな奴ほっとけばいいだろ!?なんでアンタが庇う必要がある!?こんな根暗野郎なんて無視しとけばいいだろうが!」


ーーズキッ


心にヒビが入る音がした。


確かに彼に僕を庇う理由は見当たらない。


もしかしたら…齋藤くん達みたいにカモにするのかもしれない。


しかし彼から発せられた言葉には僕が思うようなことは全くないことを証明するものであった。


「は?…"ダチ"だからに決まってるだろ?」


いとも簡単に僕が欲しい言葉を言う彼は、それを僕に与えてくれる。


より一層彼が輝いて見えた。