隠れ鬼ごっこ

ギシッ…


昴「ッ!」


昴の手を掴む鬼の力は強く、振りほどくどころか握り潰されてしまいそうだった。

拓「昴っ!!」


昴「はは…マジかぁ…。ゲームオーバーのようだわ」

ヘラッと笑った昴が拓海に言った。


拓「な…何、言ってんだよ、昴」


昴「あいつ(文太)を殴る気満々だったのになぁ…。どうやら、俺が俺等の中で最初の“脱落者”になっちまうみてぇだわ、ハハ」


拓「わっ、笑い事じゃねぇだろ!」


昴「まぁなー…。つーことで。俺は脱落っぽいからさ、行けよ、拓海」


微笑みながら昴は言う。


拓「で…出来るわけねぇだろ!!」


昴「拓海…良いから」


拓「そんなのおかしいぜ!文太みてぇな事すんなっ!」


昴「だけど……。…ッ!」

ギリギリッと左腕を徐々に回される。


昴「早く…行けよ…。頼むから…」


祈るように言う昴に対し、拓海は声を荒げる。


拓「何、言ってんだよ…!俺は逃げねぇぞ!お前を残して逃げるなんて――」


昴「行けよっ!!」


ビクッ


昴の大声に拓海は驚く。


昴は滅多に大声を出さない。


昴「ここで…!2人捕まってどうすんだよ!!だったら、どっちかが逃げ延びて…!文太や怜や雅明を助けてやってくれよ!俺には…もうお前を先に行かせる事しか出来ないんだ…!」


怒鳴ってはいても、悲しそうな表情でそう言う。


拓「そんな……事…」


昴「うぁ…!」


ギチギチッ…!


左腕を更に捻られ痛みに声をあげる昴。


そんな昴を置いて…行くことなんてできるわけがなかった。