隠れ鬼ごっこ

雅「文…太？」


俺たちは文太を見たが、文太は誰とも目を合わせなかった。


昴「お前…冗談だろ？こんな時に単独行動は死ぬのも一緒だぞ!?」


拓「そうだぜ！危険過ぎる！」


雅「そんな無謀な事させるわけにはいかないよ！皆で帰るんだから！」


怜「そうだぞ、文太。俺たちは…お前1人にしてまで、生き残ろうなんて考えていない」


俺たちはそれぞれ言った。

自分の言いたい事を。


でも…ダメだった。


今の文太には何も聞こえていなかった。


文「…ありがとう。でも、お前等がそうでも…俺は嫌なんだよ」


文太は目を伏せながら言った。


雅「嫌って…？」


雅明の質問に何も答えない。


拓「もしかして…さっき俺が言ったせいか？だったら…ゴメン。でも、アレは焦って――「だから…謝る必要なんかないって言ってんだろ」


拓海の言葉に被せながら言った。


雅「だったら…なんで……」


文「その方が…効率いいんだろ？だったらそれでいいじゃん。この中で、1番、足速いの俺だし」


静かに…でもハッキリ文太はそう言った。


確かに、この中だったら文太が1番足が速い。


文「で、2番目に足速い怜が1番足が遅い雅明を連れて、大体同じくらいの昴と拓海が一緒に行ったらいいんじゃねぇの？」


文太の顔にいつもの笑顔はない。


でも、もし2、2、1に分けるならこれで良いと思う。

雅明はこの中では1番遅い(世間的には決して遅くない)分、気配とか察知しやすいから俺と行けば丁度良いかもしれない。


他の2人は1番仲良いし、コンビネーションが良いから良い。


でも……


文太が1人で行くと言っている…本当の理由はこれじゃない。


俺は静かに口を開いた。


怜「文太…。本当は違うんだろ？拓海が言った、言わないに関わらず……。責任を感じてるんだろ？だから…責任取るためにそんな事、言って―――」


俺がそこまで言った瞬間……


文「ちげぇって言ってんだろ！！」


雅「!?」


今まで静かだった文太が怒鳴った。