俺にだけ愛された女の子は……。


頼っちゃいけないと、
他の人を支えにつかって立っちゃいけないとわかっているのに。

一度その手を掴んでしまうと、
手放したくなくなるとわかっているのに。


ダメだなぁ。
新しい環境に踏み込むなんて、
記憶の中で一番新しいのは、幼稚園から小学校に上がる時ぶりだな。

あの家から、
外の世界に飛び出す幼稚園入学の頃は、記憶にないしな。

ただ覚えているのは、
あの頃はすでに母が私を人形と呼び、
入園式の前日に


「よろこびなさい。

My doll

明日から、あなたは少しの間この家から出ることを許される。

ダメよ。

そんなに目を輝かせちゃ。

あなたは、自由になるのではないのよ。
そこは、勘違いしないでね。

あなたは、いつまで経っても私の可愛いお人形なんだから。

くれぐれもお母様の顔に泥を塗るんじゃないよ。

そしたら、またあそこに閉じ込めるから。」