沙耶香達を熱気で遠ざけていた蒸気は、仁史の靴底で遮られた。


意を決した沙耶香は目を固く閉じ、目の前の仁史の腕の中に飛び込んだ……

左足がガチャガチャと鳴る。
熱くはなかった。

「さぁ、行って!」

その言葉を聞いて、無我夢中で走った。

『5秒……4秒……』