ふぞろいな三角たち

午前の練習が終わり、体育館を出ようとしたところで、私の取り巻きの女の子に囲まれた。

いつものように、適当におしゃべりをして、差し入れなんかもちょっともらいながら、笑顔でバイバイをしてシャワールームに向かった。


はあ…何気にこの作業が、一番疲れるんですけど。




先に行った美優の背中を追いかけながら、渡り廊下を歩いていると、音楽室のほうから綺麗なピアノのメロディが流れてきたのに気づいた。







何だっけ?この曲??

確かすっごく女の子っぽいタイトルの…




「乙女の祈りだね…二階堂先輩かな?弾いてるの。」


ついうっとりと聞き入っていると、後ろからいきなり樹がそう声をかけてきた。



「ああ、そんなタイトルだったね。
私もこんな風に、ピアノとか弾けたらいいのにな。」



小さい頃からレスリングに明け暮れていた私の指は、とても太くそれでいて短くて、ピアノとか絶対無理だろうって、親にも散々言われてきた。


父親が男子レスリングの日本代表で、しかも母親も元女子プロ選手だったし、せめて名前くらいは女の子っぽいものをと『麗』なんて付けてくれたのに、ちっとも私は女の子らしいことができない。



「でも、ピアノが弾けなくても、麗は料理が上手でしょ?
それって、とっても女の子っぽくて好きだけどな、僕は。」




樹は何で、こんなに優しいの?

いつも私の欲しい言葉を、さりげなく言ってくれる。

いつもいつも、程よいタイミングで、私を癒してくれるんだ。