「先生…ちょっといい?」

鬼のような雑用のあと、「たまには練習みてくる」と恵子と別れて、グランドの先生に会いにきた。


「先生は…覚えてる?フラッシュバックしたりしない?」


「…するよ…。
俺は…プールに沈んでた志賀。

ちなみに俺、プールからあがるように指示出したのも、荒木に指示出したのも全く覚えてない。


お前みたいに断片的にでも覚えてないよ。


水泳の授業も身体が震える。」


「那智のこともあるから。
過呼吸の生徒みると、今だに足がすくむ。

来年の体育の授業カリキュラムから水泳外そうとして、体育の先生と教頭から大目玉くらった。」


震える、足がすくむ、大目玉…どれも先生には似合わない。


「…どうしたらいい…

恵子に触ってないと安心できない。」


「触ってればいいじゃん。
俺…嫌なことあったら那智ギューッてするよ。

水泳の日はギューッてしてもらってから、出てくる。


ちゃんとつらいって言ったほうが相手は安心する。

水泳の授業のあとは…那智…絶対電話くれるし。」