クラウピア 〜雲の上の国の物語〜

《オカシイ。》
 虹蛇である自分がここまで苦戦するなど、通常ありえない。

しかも、相手の青蛇はどこか、本気で戦っていないような気がする。

なにか、

なにか、この蛇は隠している。

《オ前ハ、本当ニ、タダノジャイアントスネークノ一種ナノカ?》
 攻撃をやめ、距離をとる。
《ククク…サスガニ噂ニ名高イ虹蛇。ダガ、俺ノコトガワカラナケレバ、自分デ…》
 すると神殿から少女と少年が出てくる。
『大丈夫?ウォルンクァ!』
《アア。ソレヨリ、ナナ、アイツノ正体ヲ調ベロ。》
 青蛇をにらみながら言う。
『ただのジャイアントスネークじゃないの?』
《イイカラ!》
 虹蛇は追い打ちをかける。
『わかったわよ。』
《サセルカ!》
 青蛇はするどく、刺そうとする。

しかし、虹蛇がはじく。

『汝、我に敵の真名を教えよ。』
 すると、ナナが光り輝く。
『……ア………ペプ…』
 そして、アペプとナナが言った。
《アペプ…フン。通リデ。》
『誰なのアペプって?』
 聞いたことないし。

まあ、あんなレインボーな蛇も知らんけど。

『太陽を食らうこともできるって言われる、太陽神ラーを中心とする、エジプトの神々の永遠のかつ最大の宿敵よ。』
『へー。』
『ウォルンクァが苦戦するわけね。』
《今ノデ、ワカッタ。俺ハアイツト戦エナイ。》
『どうして?ウォルンクァ?』
《俺ハマダマダ戦エルガ、ナナ、お前ノ魔力ガキツイダロ?タダデサエ、地上ノ人間ヲ召喚シテルンダカラナ。》
『…まあ。』
《時間ヲ稼グ。神殿ノ影響外ノ魔法ガ使エルトコロマデ行キ、城ヘ帰レ!』
『わかった。任せたわよ、ウォルンクァ。』
 ウォルンクァはうなずく。