クラウピア 〜雲の上の国の物語〜

『西本〜』
 遠くから俺の名を呼ぶ声が聞こえる。

この声は…

『林?』
『なんだ。また涼子ちゃんに怒られてたのか?』
 あきれたって顔で答える。

…俺は別に悪くはないんだけどねぇ。

いや、悪いのか?

でも、俺より問題児はたくさんいるぞ?

『まあ…』
『ったく。お前、涼子ちゃんに惚れられてんじゃないのか?』
『んなわけないだろ。バーカ。』
『これからゲーセン行くけど、どうする?』
『わり。金ないもん。』
『そっか。お前がいりゃ、壮絶な勝ち抜き劇が見れるんだけどな。』
『また今度に。』
『ああ。じゃあな。』
『また。』
 2人は反対方向に歩き出した。


………………………………


『この世に光をもたらす正義の使者よ。我が呼びかけに応え、召喚されたし。』
 目をつぶり、杖に手をかざして言っていたが…

杖を引き抜き…

天にかざす。

『勇敢な心を持つ者、西本康!』


……………………………

『ただいま。』
 玄関のドアを開ける。
《…に光をもたらす正義の使者よ。我が呼びかけに応え、召喚されたし。》
 いきなり、頭に響く。

女の子の声だ。

《…勇敢な心を持つ者、西本康!》
『俺?』
 いきなり目の前が真っ白になる。



『コウ〜コウ〜』
 玄関に母親が出てくる。
『あれ?コウ、帰って来たと思ったんだけど。』


……………………………


『わわわわわ!』
 いきなり、光の出口が見え、女の子が見えた。

訂正。

可愛い女の…

『ドスン!』
『いってぇ!』
 頭から落ちる。

が、なにかがクッションになって大丈夫だったみたいだ。

『むにゅ。』
『え?むにゅ?』
『ちょ、なにしてるのーっ!』
 いきなり鉄拳が顔面に飛んでくる。