クラウピア 〜雲の上の国の物語〜

『たぶん悪い子じゃないから、傷つけすぎないでね。』
『難シイカモナ。相手ハ、ジャイアントスネークノ中デモ、水ニ特化シタタイプダ。』
『だから?』
『神殿ヲ水没サセラレタラ助ケラレナイゾ?』
『なんとかしてよ。私、後1回しか召喚使える魔力が残ってないんだから。』
『俺ヲ召喚シテソレダケ残ッテイレバ十分ダロ?』
『そうかな…』
『ホラ、ハヤク行ケ。』
『頼むね。ウォルンクァ。』


…………………………

『ふわぁ〜ぁ…』
 つまんねぇ…

人生がつまんねぇよ。

ただ、起きて、食って、勉強して、寝ての繰り返し。

ある程度、頑張りゃ、それなりに結果が出る。

だけど、頑張ったところでねぇ…

そんなにいいことないし。

だから、差し障りのない成績をとって、

目を付けられないようにはしていたんだけどね。

あの新人教師…

めんどくせぇ…

せめて、かわいい女の子の1人や2人いりゃあ、頑張れるんだけどね。

あー、これからなにやろ…

案外、あの教師をバカにしてた方が楽しいかも。

なんてね。


……………………………


『よし。』
 神殿の中には、石造りの大きな召喚場所がある。

『ここが勇者を召喚するための石室ね。』
 陣の真ん中に杖を突き刺す。

そして、目をつぶり…

指を眉間につける。

『おねぇちゃん。聞こえる?』
《ナナ。聞こえるよ。》
 声が直接、頭に響く。
『見つけた?勇者となれそうな人。』
《うーん。たぶん。》
『たぶんってなによー!』
《魔力もあるし、才能も秘めてるわ。だけど…》
『だけど?』
《性格に多少の問題が。》
『え゙…それも才能の一部じゃ…』
《でもずば抜けてる。才能だけなら、あなたを超えるかも。》
 私を越えるねぇ…

そんなことありえんのかなぁ…?

天界でトップと言われてる、私を越えるかもなんて。

『…まあ、いいわ。はじめる。』
『名前は?』
《コウくん。西本康くん。》


……………………………