クラウピア 〜雲の上の国の物語〜

『だけど、倒さなきゃいけない。私の兄を殺した人なんだから。』
 ナナは自分に言い聞かせるようにいう。

そして、俺を見る。

『でもね、アルベルトを倒せる人はクラウピアにはいない。なぜなら、クラウピアで1番といってもいい、魔術師なんだもの。だから、あなたを呼んだ。』
『俺を呼んでも…』
『大丈夫。可能性があるんだから、わざわざ召喚したのよ。あの危険な神殿に行って。』
『………』
 だけど、

俺は…

『勝てる。術は私が教える。』
『………』
 勝てる…

そんなことありえないだろ。

俺は今年18歳。

相手はガキん頃から魔法とかをやってるんだ。

無理に決まってる。

『大丈夫。九尾をいきなり呼べた、あなたの才能、そして、あなたの半端じゃない魔力の含有量。魔力の含有量は鍛えられないから、それは完璧に才能なのよ。アルベルトよりもすごい量。』
『ホントか?』
『ホントよ!それに、自在に魔法を使えてごらん。地上での生活よりま、何倍も楽しいわ。』
『…たしかに。』
『ね?』
 でも、

それでも、

『…勝てるかどうかはわからないぞ?』
『大丈夫。そしたら、まあ、なんとかするわよ。』
 なんて、メチャクチャなやつ。

でも、すごくいい奴だ。

そんなナナを苦しめるやつは…

俺は…

許せない。