辺りもうす暗くなった
夜道を尚人と歩く


お馴染みのあの土手道は
尚人にとっても
懐かしの場所



「昔さぁー」

静かな土手道に尚人の
声が響く


「ん?」


「この道でよく周と
鬼ごっことかサッカー
とかして色々遊んでは
服汚して親に怒られ
たんよなー」


懐かしそうな眼差しで
眺めながら話す尚人


「そーなんだー。この道
ってさー季節ごとに色々
な景色を見せて
くれそう」


「そーそーっ。季節の
変わり目はこの場所で
分かる!!って感じっ」

「ずっと変わらないでいて
欲しいよね、こういう
場所って」



「だなっ。俺もアイツもさ
なんかこの場所で
繋がってる感じが
すんだよ」


「どういうことー?」


「長い付き合いだとさ
やっぱ喧嘩もいっぱい
あんじゃん。けどここ
いつも通ってガキん時の
頃思い出すと喧嘩してた
こととか何か忘れる
っていうかさっ」


「そっかぁー」





私が育ったこの場所が
尚人や周にとっても
大きな存在の場所


それがなんだか
嬉しかった


「希望の家はこの近く?」


「えっ!?あっうん。この
土手を下りたすぐだよ」


「そっか。俺はこのまま
まだ先だわ!そろそろ家
だし、気をつけてなっ」


「やけに優しいじゃんっ!
ありがと!尚人も寄り道
しないでまっすぐ帰ん
なよ?!」


「ハハッ!親かよっ!おぅ!
じゃぁ、また明日なっ」


「うん!じゃぁーねっ」



1人になると急に寂しさ
が襲ってくる


人ってきっと一人じゃ
生きられない生き物
なんだね…



私は花だった頃
寂しいなんて思った
ことなかった



だけど人は温かさを知る
ことが出来る

それは寂しさを生む
ことにもなるんだね…


知や由佳莉に尚人


そしてー…周。


みんなにたくさんの事を
教えてもらった


こういう形で出会って
しまったけど


やっぱりみんなとの
出会いは


かけがえのない
私の人生だよ


―もうすぐ夏がくる

私は冬から春にかけて
しか咲かない花だから
夏を知らない


人生初めての夏
そして最後でもある
夏…


残された時間を


私は……



周やみんなと過ごして
いたい―…