朝になると雨は
上がっていた

空はまだ曇っている

梅雨独特のにおいが
ドアを開けると同時に
入ってくる


今日も朝早くから
お弁当を作り
カバンを持っていつも
のように学校へ向かう


あの土手道に入った時
優しい香りがした



ドカッ!


「っっ痛っ!!」


「はよー。」



自分のカバンを私の
頭に当てて大きな
あくびをしながら
挨拶―


― 周だ。


「ったいなぁー!朝から
なにすんのよー」


「朝っぱらから元気
だよな」


眠たそうな顔で歩く
周の手には
私の傘がしっかり
握ってあった



見なかったことにして
話しを続ける


「今日周早いね。いつも
ギリギリ登校なのに」

「おー。はいこれ!
邪魔だけど持って
きてやった!」


そう言い照れくさそう
に傘を差し出した


「ププッ」


「なんだょっ」


顔が赤くなってる


――かわいいっ


「いーえっ別に」


白くて大きな手
きっと温かい
手なんだろうなぁ…


土手道には2人しか
いなくて静まり
返っている


この空気が私の心臓を
動かす…


―何かっ話さなきゃ…


この音聞かれそう…―


焦った私はふと
口が滑った


「かっ彼女できたの?」

!!!


何を言ってんだ私!!


「はぁ?何だよいきなり
寝ぼけてんのか?」


うっ…


だよね…


―何を言うんだ…
私は―


「いやっ別にその~
あっ!!そうそう
ちょっと聞いてさっ」

「何を?」

不思議そうな顔で
私に目を向ける


「えっ?あ~の~…
池上さんって人の話
元カノなんだってねー
かわいいよね
池上さん!!」


ドクン ドクン…


動揺している…私

落ち着け!!

落ち着くんだ!!


「あー舞のことか」


舞…っていうんだ…

「うっうん。やり直す
のも秒読みみたいな
こと聞いた。うまく
行ってるんだね」


「ふーん…そんな噂
でてんだ。初めて
知った!ハハッ」


図星…ってこと…?!

「まぁどっちにしても
お前には関係ねぇな」

ズキン…


「まっそーだけどさ!
友達としてちょっと
気になってさっハハッ」


関係ない…か

そうだけど……



そうなんだけど…


胸の奥が痛むよ…